胃内視鏡検査でわかる病気

胃内視鏡検査でわかる疾患

胃内視鏡検査でわかる疾患胃内視鏡検査では、咽頭、食道、胃、十二指腸を直接観察でき、疑わしい部分の組織を採取して生検を行えるため、さまざまな疾患の早期発見や確定診断に役立ちます。咽頭、食道、胃、十二指腸に起こる早期のがんは自覚症状がほとんどなく、胃内視鏡検査でのみ発見可能です。そこで、症状が現れる前に、がんリスクが上がる40歳になったら一度、内視鏡検査を受けることが重要です。

胃の疾患

ピロリ菌感染の有無

胃内視鏡検査では、ピロリ菌感染の有無を調べることもできます。ピロリ菌感染がない方は胃がんになりにくいことがわかっており、ピロリ菌感染がある・または以前に感染していた方は胃がんリスクが高くなります。除菌治療の普及や感染者数の減少により胃がんによる死亡率は下がってきており、以前のようにがんによる死亡原因の1位ではありませんが、それでもまだ年間約5万人の方が胃がんにより亡くなっているのも事実です。
そのため、ピロリ菌感染がわかったら、除菌治療を受けた上で、定期的な胃内視鏡検査を受けて胃の萎縮の状態を確かめることが必要になります。


早期胃がん

がんが胃粘膜表面にとどまっているもので、この段階であれば内視鏡手術で完治も期待できますし、日常生活やお仕事に大きな影響を与えずに治療可能です。

進行胃がん

早期胃がんはやがて粘膜表面から筋層に向けて浸潤していき、胃以外の臓器への転移やリンパ節転移へと進行していきます。進行胃がんは、胃壁の筋層より深くまでがんが進行した状態です。進行胃がんは内視鏡的な切除では治療できず、開腹による外科的手術や化学療法などが必要になります。
ただし、胃がんはこの進行胃がんの段階まで進んでもほとんど自覚症状がありません。そのため、年齢が上がってきて念のために受けた胃内視鏡検査で進行がんがみつかることもあります。

スキルス胃がん

通常の胃がんと異なり、ばらばらになったがん細胞が胃の粘膜の下に広がっていくタイプの胃がんです。腹膜播種という腹膜への転移を起こしやすく、進行が早いという特徴を持っています。また、発症が多いのは30~50歳の女性であり、比較的若い世代に多くなっています。
進行が早いため治療が進んできた現在でも死亡率が高く、また無症状なケースが多いため早期発見も難しい疾患です。リスクの高い方は若いうちから定期的に内視鏡検査を受け、ピロリ菌に感染していたら除菌治療を受けることをおすすめします。

胃悪性リンパ腫

あらゆる悪性リンパ腫のうち、胃に発生するものは約8%であり、ピロリ菌感染も大きくかかわっています。
ピロリ菌に感染しており、ほかの臓器に転移を起こしておらず、進行速度が遅くて悪性度が低い場合、ピロリ菌除菌成功で腫瘍が退縮して長期生存率が90%以上になると報告があります。この場合の再発率は3%程度です。そのため、内視鏡検査でピロリ菌感染の有無を調べることはとても重要です。
胃悪性リンパ腫では、ピロリ菌除菌のほか、開腹による外科手術、科学療法、放射線療法などの治療を行います。腫瘍や疑わしい病変があった場合には内視鏡検査時に組織を採取できますので、生検を行った上で正確な診断のもと、適切な治療を選択することが重要です。

胃腺腫

胃粘膜に発生した良性の腫瘍であり、すぐにかん化することは多くありませんが、10年以上経過すると数10%がかん化するとされているため、定期的な経過観察が重要です。形態や大きさによってがん化する可能性が高い場合には内視鏡による切除も可能です。内視鏡検査時に組織を採取して病理組織検査を行い、まずはがんと鑑別します。

胃潰瘍

主にピロリ菌感染や痛み止めの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)によって起こります。胃の粘膜が傷付いて、一部の粘膜や粘膜下の組織がなくなっている状態です。ピロリ菌感染がある場合、除菌治療を行うことで胃潰瘍の再発防止につながります。これはまた、胃がんリスクを軽減することにもつながります。
痛み止めの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、胃の血流を阻害して胃粘膜が傷つきやすくなりますので、胃潰瘍になった場合にはできるだけほかのお薬を使うことが望ましいのですが、常用の必要があるケースもあります。その際には胃酸を抑える薬を併用するなどを行い、できるだけ胃に負担をかけないようにしていきます。

胃静脈瘤

肝炎などによる肝硬変から起こる胃の疾患です。肝硬変になると肝臓に血液が流れにくくなり、行き場がなくなった血液が胃や食道に流れ込んでしまいます。胃静脈瘤は、それによって胃の静脈に異常な膨らみができている状態です。
肝硬変の進行により胃に流れていく血液が増え、膨らみが大きくなって破裂すると命にもかかわります。そのため、早期発見と治療がとても重要な疾患です。
破裂の可能性がある胃静脈瘤があった場合には、内視鏡による治療を行って破裂を予防します。

胃粘膜下腫瘍

胃粘膜より深い層にできる腫瘍で、粘膜を突き上げるように成長していきますので、内視鏡検査では粘膜が盛り上がっているように見えます。ほとんどの場合、定期的な経過観察で変化をみていきます。まれですが、サイズが大きくなることがあり、肝臓やリンパ節への転移を起こす悪性の胃GIST(消化管間質腫瘍)になるケースもあり、その場合には手術や分子標的治療が必要になります。

表層性胃炎

胃粘膜表面に炎症が起こっている状態です。ほとんどは線状の発赤として現れます。暴飲暴食やストレス、不安などが原因とされています。胃酸過多の状態でなりやすく、ピロリ菌陰性で胃酸の分泌が多い方がなりやすいとされています。胃酸過多の治療とともに、食生活・生活習慣の改善も重要です。

萎縮性胃炎

ピロリ菌に感染すると慢性的な炎症が続き、加齢によって胃粘膜は萎縮し、薄くなっていき、胃がん発生リスクが高まります。萎縮が進行すると胃粘膜が腸の粘膜に置き換わってしまう腸上皮化生が起こり、粘膜の状態が荒れていきます。腸上皮化生が起こるとピロリ菌すら生息できなくなり、検査ではピロリ菌陰性と出てしまいます。ただし、以前はピロリ菌に感染していて、萎縮性胃炎の進行によりピロリ菌陰性になった状態は、胃がんリスクが最も高く注意が必要です。
萎縮性胃炎の治療で重要なのは、まず胃内視鏡検査を受けて胃粘膜の状態を正確に診断することです。萎縮の範囲や状態、腸上皮化生の有無をしっかり確認した上で、適切な治療を行っていきます。

鳥肌胃炎

胃の炎症のひとつです。鳥肌胃炎が発生するのは前庭部という胃の出口周辺が多く、鳥の肌のようにリンパ濾胞が増生した炎症です。ピロリ菌感染とのつながりが指摘されており、胃がんの中でも進行の早いスキルス胃がんにもかかわっているとされているなど、胃がんリスクが高い炎症です。
鳥肌胃炎の場合、ピロリ菌陽性であれば除菌治療が有効です。痛みも除菌成功によって解消するケースがあります。スキルス胃がんのリスクを考えると、定期的な胃内視鏡検査がとても重要な疾患です。


胃憩室

憩室は袋状に飛び出したもので、胃憩室は外側に向かって飛び出しますので、内視鏡ではくぼみとして観察されます。胃粘膜の下にある筋肉の層が薄くて弱い入口の噴門部・出口の幽門前庭部にできることが多いとされています。胃憩室ができたことによる症状は特にありません。

胃底腺ポリープ

良性のポリープで、小さくなって消失することがありますし、ほとんどの場合、良性のままです。ピロリ菌に感染していない健康な胃にできやすく、女性ホルモンとの関連性が指摘されていますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。

胃アニサキス症

魚の生食によって、寄生虫が感染して起こります。サバ、イカ、サケ、アジ、タラなどに寄生しており、冷凍や加熱によって感染を防ぐことができます。肉眼で見える程度の大きさですから、適切な処置が行われていれば生食しても感染するリスクはほとんどありません。
感染すると、胃に強い痛みが現れます。ヒトの体内でアニサキスが生き続けることはできないのでいずれ痛みは治まりますが、かなりの激痛となる場合もあります。内視鏡でアニサキスを除去すると痛みはすぐに引いていきますので、お刺身を食べた後で胃に強い痛みが起こったら、受診してください。


十二指腸の疾患

十二指腸がん

胃がんや大腸がんのように頻度の高いがんではありませんが、治療に開腹手術が必要になるケースが多い傾向があります。十二指腸の粘膜は非常に薄いため、胃や大腸に比べるとそれだけ手術の難易度が高くなり、内視鏡手術ができないことが多いのです。

十二指腸潰瘍

胃潰瘍と同様に、十二指腸の粘膜が傷ついて潰瘍化し、ほとんどのケースで腹痛を生じます。原因ではピロリ菌感染が多く、若い世代にも多い疾患です。十二指腸潰瘍が見つかったらピロリ菌感染の有無を調べ、感染がわかったら除菌治療を行うことで再発率を大きく低下することが可能です。時に、十二指腸潰瘍を何度か繰り返している方には除菌治療が不可欠です。

食道・咽頭の疾患

食道がん

食道がんは、進行がんになるまでほとんど自覚症状がありません。また、胃や大腸には一番外側に漿膜(しょうまく)という膜がありますが、食道にはそれがないため、リンパ節やほかの臓器への転移が起こりやすい傾向があります。さらに、食道の外科的手術はとても難易度が高く、身体への負担も大きいため、できるだけ早期の発見が重要になってきます。胃内視鏡検査を受けることで、食道や咽頭も詳細に調べられますので、定期的な検査をおすすめしています。

食道・咽頭乳頭腫

白い小さな隆起ができる良性の腫瘍です。胃酸の逆流によって起こるとみられています。

食道粘膜下腫瘍

粘膜表面にできる食道がんと違い、粘膜より深い層に発生する腫瘍です。悪性のことは少なく、ほとんどは良性腫瘍である平滑筋腫や血管腫です。
ただし、腫瘍が大きい場合や短期間で腫瘍が大きくなるなどがあると、悪性リンパ腫や悪性腫瘍であるGISTの可能性があります。そのため、食道粘膜下腫瘍が見つかった場合には、腫瘍の大きさや形態をしっかり経過観察していく必要があります。

逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア

胃には強い胃酸から粘膜を守るメカニズムを備えていますが、食道にはそれがありません。そのため、胃液の逆流が起こると食道は炎症を起こしてしまいます。これが逆流性食道炎です。食道裂孔ヘルニアは、本来腹部にあるべき胃の一部が食道のある胸部に飛び出してしまっている状態です。食道裂孔ヘルニアになると胃液の逆流が起こりやすくなります。
胃液の逆流によって起こる症状は、炎症にともなう胸やけや胃もたれ、胃周辺の痛み、咳、喘息、喉の違和感、喉が詰まった感じがする、声がれ、睡眠障害など、とても幅広いのが特徴です。
逆流が続いて食道の炎症が長引くと食道腺がんを引き起こすことがわかってきているため、適切な治療が重要になってきます。
原因は、食道や胃の蠕動運動の低下、筋肉のゆるみによる食道裂孔ヘルニアなどがあり、肥満や加齢などの要因によって起こります。そのため、肥満の解消や食生活の改善は治療に不可欠です。胃酸を抑える薬で症状を緩和させながら生活習慣を改善していき、再発を予防しましょう。


食道静脈瘤

肝炎による肝硬変で肝臓に流れることができなくなった血液が食道に流れ込んで静脈瘤ができた状態です。膨らみが大きくなって破裂すると命にもかかわりますので、早期発見と治療がとても重要な疾患です。注意したいのは、肝硬変の進行により静脈瘤が大きくなることです。静脈瘤があった場合には注意深く経過観察を行い、少しでも破裂の可能性があったら適切な治療を受けるようにしてください。

食道異物

魚の骨が喉や食道に刺さってしまうことや、お餅などが食道や咽喉に詰まってしまうケースはよくあります。また、薬をシートごとうっかり飲んでしまうということも珍しくありません。とがっているものや角のあるものは食道に穴を開けてしまう可能性がありますし、咽喉に食べ物が詰まってしまうと命にも関わります。早急に内視鏡専門医を受診して異物を取り除いてもらい、傷が付いていないかしっかり確認してもらってください。

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